かつて全国的にごく普通に存在した座席夜行急行列車。なかでも東北方面への夜行列車は一大勢力で多くの列車が行き来していました。しかし夜行列車削減の動きの中，乗車率も低迷し定期運行が廃止，そして現在では季節運転もみられなくなってしまいました。

　私が一番お世話になり，そして最も印象に残っているのは上野−青森間の急行「八甲田」です。学生時代に上京した私が北海道に帰省する際は大抵，北海道ワイド周遊券か道南ワイド周遊券を使っていました。そうなると重宝なのが急行列車の自由席。必然的に急行「八甲田」のお世話になることになり，多客時は発車の３，４時間前から上野駅のホームで待ち席を確保したものです。車両は14系客車で当初はギッコンバッタン動いてしまう簡易リクライニングシートで寝づらかったのですが，平成3,4年頃から固定が効くようになり喜んだ記憶があります。本当に混んでいる時は洒落にならない混みかたで，まさに通路に新聞紙を敷いて寝る，そんな光景が繰り広げられました。

　急行「八甲田」の利用客は私と同じような周遊券客も多かったと思いますが，旧来からの岩手・青森方面のお客も多く，時には隣に座った出稼ぎから青森へ帰るオジサンと苦労しながら話して帰る，とかビールおごってもらった，なんてことも数回ありました。また上り列車で上京し，到着した足で大学へ行ったこともありました。

　いろいろな思い出の詰まったこの急行「八甲田」も通常期の乗客の減少と夜行列車削減の動きの中で平成5年12月のダイヤ改正で季節列車に格下げされてしまいました。以降，多客時には運転されていたのですが平成10〜11年頃から季節便の設定も無くなってしまった模様です。使い勝手が良く，安い運賃で距離が稼げる夜行座席急行が無くなったのは残念です。是非季節便の復活を望みます。